最近、Googleは2025年11月1日から、Google Playに提出されるすべての新しいアプリおよび既存アプリのアップデートが、Android 15以降を対象とする場合、16 KBのページサイズをサポートする必要があると発表しました。これまでAndroidは主に4 KBのページサイズを使用していましたが、Android 15（API 35）から、大容量RAMを搭載したデバイスでのパフォーマンス最適化のために16 KBでの動作が許可されています。経験豊富なAndroidデベロッパーとして、この変更がアプリのビルドおよびリリースプロセスに明確な影響を与えると考えています。この記事では、Gradleビルドシステム、App Bundleの作成、既存アプリのアップデートに至るまでの影響を分析し、開発者がこの変更に備えるための対処方法を共有します。

ビルドシステム（Gradle、Android SDK）への影響

まず注目すべきはビルドツールです。Googleは、Android Gradle Plugin（AGP）のバージョン8.5.1以降およびAndroid NDK r28以降にアップグレードすることを推奨しています。これにより、16 KBページサイズが自動的にサポートされます。具体的には、最新のAGPはApp Bundleやbundletoolで生成されるAPKに16 KBページサイズの設定を自動的に追加し、最新のNDKはネイティブライブラリ（.soファイル）を16 KBに正しくアライメントしてビルドします。現在のプロジェクトが古いAGP（例：8.1以下）やNDK r27以下を使用している場合、16 KBアライメントでネイティブライブラリを再ビルドするためにアップデートが必要です。一方、アプリが完全にJava/Kotlinで記述されており、ネイティブコードを含まない場合、Googleはこれらのアプリが最初から16 KBと互換性があると確認しています。ただし、予期しないメモリ関連の問題を避けるため、最新のGradleおよびNDK環境で再ビルドすることをお勧めします。

このプロセスでは、Gradle、Android Studio、Build Toolsを上記の要件に適合するようアップデートしてください。最新のAndroid Studio（Arctic Fox/Dolphin以降）はAGP 8.5.xおよび最新NDKをサポートしています。私は通常、build.gradleでAndroid Gradle Pluginのclasspathを更新し、Android SDK ManagerでSDK/NDKをアップグレードします。これにより、必要なパラメータ（例：-DANDROID_SUPPORT_FLEXIBLE_PAGE_SIZES=ON）が自動的に追加され、ネイティブライブラリのzipalignが正しく実行されます。Googleのガイドライン（AGPおよびNDKのアップデート）に従えば、ビルドシステムの対応は比較的スムーズで、深い介入は必要ありません。

AAB形式とダイナミックデリバリーへの影響

App Bundle（AAB）に関しては、幸いなことにフォーマットの構造自体は変更されません。変更点はバンドル内のコンテンツにあります。最新のAGPは、16 KBにアライメントされたネイティブライブラリをAABにパッケージします。つまり、従来通りバンドルをビルドしてアップロードするだけで済みますが、最新のツールを使用して正しい規格のスプリットAPKを生成する必要があります。ビルド後、Google Play ConsoleのApp Bundle Explorerで16 KB互換性を確認できます。Play ConsoleのApp Bundle Explorerを開き、ビルドコンプライアンスレポートを確認することをお勧めします。たとえば、アライメントが不足している.soファイルが含まれている場合、システムが修正の提案をしてくれます。このツールは、リリース前に現状を把握するのに非常に役立ちます。

ダイナミックデリバリー（Google Playの動的配信機能）については、App Bundleに基づいているため、配信メカニズムに変更はありません。ただし、注意点として、ダイナミックフィーチャーモジュールを使用し、ネイティブライブラリを含むプロジェクトの場合、各モジュールも同様に再ビルドする必要があります。たとえば、.soファイルを含むフィーチャーモジュールがある場合、そのモジュールも最新のAGPでビルドして16 KBアライメントを確保してください。AABをアップロードすると、bundletoolが各モジュールのスプリットAPKを生成し、すべて正しく処理されていれば、Play Storeは通常通り配信します。結論として、AAB形式やダイナミックデリバリーに根本的な変更はありませんが、動的モジュールのビルドプロセスもメインのモジュールと同様にアップグレードする必要があります。

既存アプリのアップデートと潜在的な問題

大きな課題の一つは、既存アプリのアップデートです。2025年11月1日以降、Play StoreはAndroid 15以上を対象とし、16 KBをサポートしていないアップデートを拒否します。実際、ネイティブライブラリを再ビルドせずにアップデートをアップロードしようとすると、Play Consoleが警告を発するか拒否されます。また、16 KBをサポートするデバイス（現在はPixel 8/9でAndroid 15 QPRを搭載）を使用するユーザーがアプリをインストールした場合、動作エラーが発生する可能性があります。Googleは、「16 KB向けに再ビルドしない場合、アプリがこれらのデバイスで正しく動作しない可能性がある」と警告しています。私の経験では、4 KBページサイズ向けにビルドされた古いアプリを16 KBデバイスにインストールすると、メモリアライメントの不一致によるクラッシュ（SIGSEGVなど）やその他のエラーが発生する可能性があります。そのため、アプリをアップデートする前に、16 KB環境のエミュレータや実機（Pixel）でテストを行い、問題を早期に発見することをお勧めします。

一方、ネイティブライブラリを含まないアプリ（Java/Kotlinのみ）の場合、ほとんど変更は必要ありません。Googleは、ネイティブコードを使用しないアプリは「変更なしで互換性がある」と明言しています。それでも、サードパーティライブラリによる間接的な問題を防ぐため、テストを推奨します。安全にアップデートするには、リリーステストの最終段階で16 KB互換性の明確なチェックを組み込むのが良い戦略です。これにより、新規アプリでもアップデートでも、4 KBおよび16 KBデバイスで安定して動作することを確認できます。

16 KB環境でのテストには、16 KBページサイズをサポートするAndroid Emulatorを使用するか、Pixelデバイスでオプションを有効化してください。たとえば、Pixel 8/9のAndroid 15では、Developer optionsに「Boot with 16 KB page size」オプションがあります（上記画像参照）。このオプションを有効にしてデバイスを再起動すると、16 KB環境に切り替わり、アプリを実行してログを確認できます。最終テストには実機（Pixel）を使用することを強く推奨します。これが実際のユーザー環境に最も近いためです。

開発者向けの提案と推奨事項

私の経験に基づく、以下の推奨事項を参考に、この変更に備えてください：

1. ツールとNDKのアップグレード まず、Android Gradle Pluginを8.5.1以上に、Android NDKをr28以上にアップグレードしてください。これにより、Gradleやbundletoolが16 KBページサイズを自動的にサポートします。また、Build Tools（バージョン35.0.0以上）やAndroid Studioが互換性を持っていることを確認してください。
2. サードパーティライブラリの確認とアップデート 多くのSDKやライブラリ（例：React Native、Flutterの最新版、Unity 2021以上）はすでに16 KBをサポートしています。依存関係リストを確認し、必要に応じてプロバイダに問い合わせ、最新バージョンにアップデートしてください。4 KBのみをサポートする古いライブラリがある場合、置き換えるか、NDKでソースを再ビルドする必要があります。
3. 16 KB環境でのテスト Android 15の16 KBカーネルを含むエミュレータや、Pixelデバイスの「Boot with 16 KB page size」オプションを使用してアプリをテストしてください。新規インストールと古いバージョンからのアップデートの両方のフローをテストします。これにより、メモリ互換性の問題（例：ページサイズをハードコードしたコード）を早期に発見できます。
4. Play Consoleでの確認 バンドルビルド後、Play ConsoleのApp Bundle Explorerで16 KB互換性を確認してください。非準拠のライブラリが検出された場合、警告が表示されます。CI/CDにGradleのビルドチェック（16 KB lint）を追加すると、エラーを自動検出できます。
5. アップデートのプロセスに注意 アップデートをデプロイする際、リリースノートで16 KBサポートを明記し、ユーザーにデバイスアップデートを推奨してください。特にネイティブコードに依存するアプリの場合、Pixelの新世代デバイスを使用する地域のユーザーに通知すると良いでしょう。また、PlayのPre-Launch Reportを活用して、Pixel 8/9や64-bitデバイスでのクラッシュを自動テストしてください。
6. 長期的な準備 16 KBチェックを開発プロセス（CI/CD）に統合してください。たとえば、check_elf_alignment.shスクリプトやAndroid Studioのlintを使用してELFアライメントを検証します。CMake/ndk-buildを使用する場合、ドキュメントに従って-DANDROID_SUPPORT_FLEXIBLE_PAGE_SIZES=ONフラグを有効化してください。

まとめ

16 KBページサイズへの移行は当初作業を増やすかもしれませんが、Googleはこれにより大幅なパフォーマンス向上が期待できるとしています。たとえば、アプリの起動時間が3～30%向上、バッテリー消費が約4.5%削減、カメラの起動が約6%高速化、システムブートが約8%高速化するとのことです。互換性を確保するための投資は、新しいデバイスでのアプリのスムーズな動作につながります。ツールのアップデート、徹底したテスト、Play Consoleのサポートを活用することで、リリースやアップデートのプロセスに大きな混乱は生じないと信じています。