SaaSマルチテナント環境でリソースを分離する
2024-09-13

はじめに

テナントの分離は、SaaSプロバイダーにとって重要な課題です。独立系ソフトウェアベンダーは、コスト効率を求めてSaaSに移行する際、テナントが他のテナントのリソースにアクセスできないようにする必要があります。テナント間のリソース共有は、SaaSビジネスに重大なリスクをもたらす可能性があります。テナント分離の方法はプロバイダーごとに異なり、ドメインやコンプライアンス、デプロイモデルなど多くの要因が影響します。このホワイトペーパーでは、AWSにおけるテナント分離の戦略や一般的なパターンを紹介し、最適な分離戦略の選択を支援します。

分離構造

1. サイロ分離

サイロ分離とは、各テナントのデータや設定を論理的に分離する技術です。これによって、あるテナントのデータが他のテナントに影響を与えたり、アクセスされたりするリスクを低減します。

利点

  • セキュリティ: 各テナントのデータが他のテナントから隔離されているため、データ流出のリスクが低減されます。
  • 性能: 各テナントのリソース使用状況を独立して管理できるため、性能が向上します。
  • カスタマイズ: テナントごとに異なるニーズに応じた設定や機能を提供しやすくなります。

課題

  • コスト: 完全な分離を行うと、それに伴うコストが増加する場合があります。
  • 複雑性: システムの設計と管理が複雑になることもあります。

結論

サイロ分離はSaaSマルチテナント環境において重要なコンセプトであり、顧客のニーズに応じた安全で性能の高いサービス提供に寄与します。しかし、実装にはコストやシステムの複雑性といった課題も伴います。目的に応じて適切な分離方法を選定することが重要です。

2. プール分離

プール分離とは、複数のテナント(顧客)によって共有されるリソース(データベース、コンピューティングリソースなど)を論理的または物理的に分離せず、効率的に管理し、使用する方法を指します。これは、必要に応じてリソースを動的に割り当てたり、テナント全体で共通のプールからリソースを利用するアプローチです。

利点

  • コスト効率:
    • リソースを効率的に配分できるため、運用コストを削減することが可能です。
  • スケーラビリティ:
    • リソースの需要に応じて容易に拡張できるため、急激なトラフィック増加にも対応しやすいです。
  • 管理の簡便さ:
    • 単一のリソースプールを管理する形式は、複数のリソースを個別に管理するよりも簡単です。

課題

  • セキュリティ:
    • テナント間のデータの分離が不十分になると、データ漏洩のリスクが高まります。十分なアクセス制御とデータセキュリティを考慮する必要があります。
  • 性能影響:
    • 一つのリソースプールを多数のテナントが利用することで、リソース競合が発生し、性能に影響を及ぼす可能性があります。

結論

プール分離は、SaaSのマルチテナント環境において、リソース管理や効率化に寄与する手法であり、コストと運用の効率化を図ります。しかしながら、適切なセキュリティ対策や性能管理を行わないと、リスクや課題が発生する可能性もあります。そのため、実装時にはそれらの要素を適切にバランスさせることが重要です。

3. ブリッジモデル

ブリッジモデルは、顧客やテナントごとに異なるデータストレージやアプリケーションロジックを設計するのではなく、共通のインフラストラクチャやサービスを介してそれらを統合するアプローチを指します。このモデルは、異なるソースのデータを「橋渡し」することで、テナントのニーズに適応しやすくなります。

利点

  • 柔軟性: テナントごとのニーズに応じて、機能や構成を簡単にカスタマイズできます。
  • 効率的なリソース利用: 共通のインフラストラクチャを使うことで、運用コストを抑えつつ、高いスケーラビリティを実現できます。
  • データ統合の容易さ: 複数のデータソースやストレージを統合しやすく、新たなアナリティクスやデータ管理を行う際に有利です。

課題

  • 複雑さの増加: 異なるデータソースやロジックを統合することで、システム全体の設計が複雑化する可能性があります。
  • セキュリティのリスク: 共通インフラストラクチャを使用することで、適切なアクセス制御やデータ隔離を行わないと、セキュリティのリスクが増大することがあります。
  • 性能管理: 共通リソースへのアクセス競合が発生する可能性があるため、性能を維持するために適切な管理が必要です。

結論

ブリッジモデルは、SaaSやマルチテナント環境において、テナントの多様なニーズに応じて柔軟かつ効率的にデータやリソースを管理するための強力な手法です。ただし、設計や運用にあたっては、複雑さの増加やセキュリティ、性能管理の観点から注意が必要です。

4. 階層 (ティア) ベースの分離

階層ベースの分離は、アプリケーションの異なる層(ティア)を、テナントごとに分離または独立に管理することを指します。この手法により、各テナントは独自のリソースやデータにアクセスできる一方で、共通のインフラストラクチャやプラットフォームを利用することが可能です。

利点

  • セキュリティ:
    • テナント間のデータアクセスを適切に制御できるため、セキュリティが向上します。
  • パフォーマンス:
    • 各ティアが独立してスケーリング可能なため、特定のテナントの使用状況による性能低下を防げます。
  • 管理の柔軟性:
    • 各層を独自に管理することにより、テナントのニーズに応じたカスタマイズやアップデートが容易になります。

課題

  • 複雑さの増加:
    • 階層を分離することでシステムの設計が複雑になり、管理や運用が難しくなることがあります。
  • コスト:
    • 階層を分けることでインフラストラクチャを増強する必要があり、コストが増加する可能性があります。
  • データ整合性の確保:
    • 異なる層でのデータ管理において、データの整合性や一貫性を維持するための仕組みを考慮する必要があります。

結論

階層ベースの分離は、SaaSおよびマルチテナントアーキテクチャにおけるデータ管理とリソース分離において有効な手法です。このアプローチは、セキュリティや柔軟性を向上させる一方で、設計や運用における複雑さやコスト増加といった課題も伴います。したがって、導入の際にはこれらの要素を慎重に考慮する必要があります。

おすすめ

  • ビジネス要件やセキュリティポリシーに基づいて選択するのが重要です。
  • 中小規模のSaaSアプリケーションであれば、コストパフォーマンスを重視して、「スキーマレベルの分離」や「データベースレベルの分離」を選ぶことが一般的です。
  • セキュリティが特に重要なアプリケーション(金融、医療など)では、サイロ分離を考慮するのが望ましいです。
  • 大規模で複雑なアプリケーションでは、障害に対する耐性や柔軟性を考慮し、階層ベースの分離を導入することも考えられます。

選択する際には、それぞれのアプローチの利点と課題を十分に考慮し、ビジネスの成長予測や顧客のニーズに合った最適な分離モデルを採用することが重要です。

PiraGoは、テクノロジーに基づいた信頼性の高いSaaSソリューションを提供し、顧客のビジネス成長を支援する企業です。豊富な経験と実績を活かし、あらゆる業界のニーズに応じた柔軟なアプローチを提供しています。

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